■焼酎製造工程
本格焼酎と泡盛はこのようにして誕生します
本格焼酎は大別して、もろみ取焼酎と粕取焼酎のニつにわけられます。 もろみ取焼酎とは、米麹(あるいは麦麹)に水と酵母を加えて発酵させたもろみ(一次もろみ)に主原料(蒸した米、麦、甘藷、ソバなど)を仕込み、発酵熟成させたもろみを単式蒸留機で蒸留して造ったものをいいます。 粕取焼酎は、清酒の副産物である酒粕をセイロ式蒸留機で蒸留して造ります。この場合、蒸気の通りをよくするためもみ殻をまぜるので、これが粕取焼酎の独特の風味のもとになっています。
原料および処理
焼酎の原料は麹(こうじ)原料と主原料に分けられ、主原料により焼酎の種類が決まります。また、主原料に基づく焼酎の風味特徴が形成されます。 麹原料には通常、米が使われますが、最近は焼酎の風味の多様化を目的に麦も使われます。
主原料には米や麦をはじめとする穀類、甘藷(かんしょ)や馬鈴薯(ばれいしょ)のようないも類、清酒製造の副産物である白糠(しろぬか)や酒粕(さけかす)のような加工原料、黒糖のような糖質原料、木の実やその他の原料が使用されます。 この工程で麹原料及ぴ主原料の洗浄、浸漬、水切り、蒸きょう、冷却が行われ、麹原料は製麹工程へ主原料は二次もろみの仕込工程へと運ばれます。
製麹(せいきく)
焼酎麹は、もろみで原料の溶解・分解に必要な酵素及び雑菌の汚染防止に必要なクエン酸を供給する役割を担っています。 いずれもアスペルギルス属の麹菌ですが、沖縄県の泡盛には黒麹菌(アワモリ菌)が使われ、九州をはじめとする諸県では白麹菌(別名・河内菌)が使われています。また、最近では風味の多様化の面から清酒用の黄麹菌も一部で使われています。
発酵
焼酎の発酵は一次もろみ(酒母)と二次もろみ(本もろみ)に分けて行われます。 一次もろみは麹と汲水を原料とし、これに培養酵母を添加して純粋で強健な酵母を多量に培養するとともに、二次もろみに必要な酵素とクエン酸の溶出を目的とします。 二次もろみは一次もろみに主原料と水を加えて、糖化と発酵を並行して行うことを目的とします。
本格焼酎は二次仕込みで蒸留しますが、泡盛は一次仕込みのもろみをそのまま蒸留する、すなわち全麹づくりというところが両者の大きな違いです。
蒸留
焼酎の蒸留機は、単式蒸留機(ポット・スチル)と連続式蒸留機(パテント・スチル)に大別されます。 単式蒸留機は、本格焼酎と泡盛をはじめ中国の蒸留酒(白酒(バイチュウ))、アラック、ウイスキー、ブランデー、ラムなどの蒸留に使われます。 連続式蒸留機は、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)をはじめウオッカ、ジン、グレイン・ウイスキー、原料アルコールなどの蒸留に使われます。
また、蒸留の仕方には、常圧蒸留と減圧蒸留の2つがあり、常圧蒸留は500年の歴史を持つ伝統的な蒸留方法で、原料の特性が生かされ、原料本来の甘みや旨味と香りが楽しめます。また、貯蔵した時の熟成効果が高く古酒や長期貯蔵酒にも良いので、泡盛や風味を生かす焼酎の蒸留法とされています。
減圧蒸留は1970年代前半に登場した新しい蒸留法です。蒸留機内部の圧力を下げ、低温で蒸留するため、淡麗でソフトな味わいになります。常圧蒸留の焼酎に比べて軽くて飲みやすく、米焼酎や麦焼酎を中心に広く使われています。
熟成
焼酎の熟成変化は、3段階に分けて考えられます。すなわち、蒸留後3~6ヵ月間の初期段階では揮発しやすい刺激性のつよい成分が主として揮散・消失し、刺激的臭味が減少します。引き続いて3年までの中期段階では種々の成分の酸化、縮合、付加による変化が主体となり、さらに3年以上の古酒化段階では不揮発性成分の濃縮、酸類とアルコール類の結合によるエステル化、丸味の増加、固有の香味成分の形成などの変化が営まれます。以上のように、焼酎は蒸留後一連の熟成変化をたどって古酒になります。